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2012年07月26日

JFFとリスクガバナンスについての議論

6/25にコアのメンバー(松浦、馬場、松尾)が集まって、JFFの枠組み、あるいはJFFにおけるfactとはなんぞや?という疑問について議論しました。以下示唆にとんだ議論だったので、小職なりの解釈ですが、メモしておきます。

当日ですが、主に食品分野(厚労省による食品中の放射性物質の基準値設定)の事例の話題提供から議論をはじめました。このとき、科学的情報の生成過程に関する課題(例えば農水省との連携の仕組み)に限らず、むしろ管理に対するアプローチの違いも基準設定において大きな影響をもたらしている模様であり、このような状況において、JFFがいかに問題解決に資するかという視点へ議論が進展しました。

「リスク」に関するガバナンスでは、リスク評価(科学的な分析)とリスク管理(政策判断)を機能的に分離しつつも、有機的に接続させる必要性が指摘されているそうです。管理側が評価に政治的圧力をかけると、弁護科学(advocacy science)の問題が懸念されます。かといって、リスク評価者と管理者を厳密に隔絶すると、管理者が必要とする情報を評価者が理解できず、管理に必要な科学的情報が生成できない懸念もあります。だからこそ「適切な」接続が必要なのですが、JFFはまさに、「適切な」接続を実現するひとつの方法論ともいえるのではないか、という議論に至りました。

JFFの概念をリスクガバナンスに組み込むと、管理側として多様なステークホルダーが関わり、そのステークホルダーが相互の対話を通じて問題のフレーミングを形成し、それを評価側に投げかけると、評価者はステークホルダーが必要とするフレーミングで科学的情報を打ち返す、といった一連の流れが考えられます。その情報に基づき、ステークホルダーがリスク管理の方針について合意形成に取り組めば、弁護科学や対立的科学の問題を回避しつつ、科学的情報に基づくリスク管理が実現できるといえるのではないでしょうか。

今後も、このような形で、さまざまな制度へJFFの概念を埋め込む方法について議論を深め、具体的な提言へとつなげていきたいと考えています。

(文責:松浦正浩)