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2012年11月29日

RISTEX政策のための科学 第1回プログラムサロンで話題提供しました

2012年11月29日の夜に開かれた「RISTEX政策のための科学 プログラムサロン」の第1回において、私たちのプロジェクトの途中成果報告を行ってまいりました。

プログラムサロンイメージ

冒頭に、RISTEXにおける科学技術イノベーション政策のための科学研究開発プログラムの総括である森田朗先生(学習院大学)から、同プログラムの概要や趣旨についてお話がありました。

続いて、本プロジェクトからの話題提供として、まず代表の松浦より、政策形成過程における科学的情報の利用について、旧来のファクト観に疑問を呈した後、科学的情報の再構築として、ステークホルダー自身が信頼できる情報を確認する作業として、共同事実確認を提案しました。

松浦正浩

次に、馬場客員研究員より、対馬における木質バイオマスを利用したエネルギーについての検討について、ステークホルダー分析の結果と、それを踏まえた今後のすすめ方について報告がありました。最後に松浦より、食品グループの放射性物質の基準設定に関する研究調査、海洋空間計画グループのカナダでのワークショップ会合および日生での取り組みについて、報告しました。

馬場健司

その後、アドバイザーの先生方、現役の行政担当者のほか、多様な参加者のみなさまから、多くの有益なご意見をいただきました。具体的には以下のような意見を頂戴しました。

  • イノベーションの創造に焦点を当てた研究分析が多いが、ポリシーデザインとしてそれを社会に実装する上で、社会的合意形成が障壁となることが考えられる。このプロジェクトは、その部分を後押しする、という期待がある。
  • 「イノベーション」との関係について明らかにされたい。
  • 認識のギャップが埋れば合意形成ができるというのであれば楽観的すぎる。価値判断などをどうとらえるか。
  • ローカル、地域、全国という事例研究のレベル設定はあまり適切でないかと。
  • 食品の事例についてはより積極的な活動が期待される。
  • 科学的根拠というものをstaticなものととらえすぎないように注意されたい。
  • 各事例における科学的情報、factとは具体的には何かをより明確にされたい。
  • 科学的根拠に基づく検討を重視するという姿勢により、研究が進んでいるところにばかり注目されることが危惧される。
  • 具体的にJFFがどのような形で社会で利用されるかをイメージして、おとしどころを明確にしないといけない。
  • JFFによって、さらなる科学的研究が必要とされている領域が明らかにされると、とてもよい。
  • JFFの事例から、共通点、相違点を拾い出し、パターン化して、指針のようなものをつくれるとよい。
  • JFFのfactというとき、David Cashのsalience, credibility, legitimacyの3基準をどう満たすのか?
  • 個別事例でJFFを適用して出てくる特殊解は、一般解としての応用性は低いだろう。
  • JFFを導入することで、地方にいる科学者などから感情的な対立を受けることはないだろうか?
  • JFFの海外事例で、自閉症に関するもの、低線量被爆に関するものはないだろうか?
  • 行政はマニュアルどおりに動きたがるが、JFFの実施は個別事例の特性に合わせる必要がある。形式知にならない部分をいかに広めるかが鍵。
  • 科学技術イノベーションという言葉の定義を考える必要がある。狭義か広義か。

iJFFプロジェクトでは、今後ともこのような機会において発表させていただき、さまざまなご意見をいただき、そして研究・調査・実践の内容に反映することで、reflectiveなプロジェクトを目指したいと思います。

(文責 松浦)

2012年11月17日

STS学会で発表しました

2012年11月17~18日に湘南国際村で開催された科学技術社会論学会の第11回年次研究大会において、馬場客員研究員と松浦特任准教授が「分散型エネルギー導入過程における共同事実確認手法の検討:ステークホルダー分析による論点の抽出と専門家パネルの構成」を発表して参りました。

発表では、松浦よりステークホルダーの概念についてわれわれの定義を示した後、馬場より対馬におけるフィールドワーク(特にステークホルダーの特定について)について詳しい説明を行いました。会場の参加者からは、河川行政で計画目的が拡張されるとともにステークホルダーが拡張したことを例に、ステークホルダー分析および対話のなかでその定義がいかに再帰的に変化しうるのかという質問、意思決定におけるステークホルダーと専門家・科学者の関係についての質問など、活発な議論が行われました。また、同じセッションでは、上智大学の宮城崇志さんから討議型世論調査の実践に関するご報告、RISTEXの濱田志穂さんから低炭素社会に関するステークホルダー対話に関するご報告が行われ、全体を通して、ステークホルダーとは何か、その役割は何か、ステークホルダーと一般市民をどう対置するか、そして専門家との関係をいかに構築するか、といった点について議論になりました。

iJFFプロジェクトでは今後とも、さまざまな学会や研究会において途中経過を積極的に発表して参ります。またそのような場での議論をもとに、研究と実践の内容をより進化させていきたいと思います。

(文責:松浦正浩)